国道特9号 | ||||
起点 | 長崎縣下縣郡 鶏知村大字鶏知字樽ヶ濱陰 |
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終点 | 長崎縣下縣郡 鶏知村大字鶏知字樽ヶ濱 |
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延長 | 1.2 km | |||
制定日 | 大正9年12月25日 | |||
改正履歴 | ||||
全体図 | Download : MR-9.trk (トラックファイル) | |||
それでも,この鶏知地区に司令部が存在していたことすら幻のごとく,当時の施設を覗わせるような形跡は少ない.また,当時の建屋の配置図などもままならないほどに記録が少ない状況となっている. 鶏知地区に司令部が置かれたのも,対馬要塞の要となった「竹敷港」の重要湾港があったことが関係している.竹敷港と対馬を縦貫する縦軸の交通路の交点,そこが鶏知にあたる. 鶏知と竹敷港とを結ぶ道路は次の国道特10号として指定されているが,国道特9号もその特10号と同じように鶏知地区を起点として浅芽湾へ向かう道路であり,あたかも寄り添うようにして指定されている. 鶏知地区の中心部から現在の対馬空港方面へと進む道は旧国道382号であった.このメインルートから浅芽湾に最も近い地点に樽ヶ浜港がある.そして,その旧国道から樽ヶ浜港へ向かう道が旧国道特9号となる. 分岐はどこにでもあるような細い住宅地へと向かう道だ.決して往来が多いとはいえない,どこにでもあるような道で,ましてや,その先に港があることすら覚束ないほどに日常的すぎる. やがて視界が広がるところに港は突如として現れる.ちょっとしたフェリーターミナルを期待するものであったが,ほぼ漁港に近い閑散とした港となっている. 多分,この道路がかつての国道であったのだろう,と思いを馳せる. これほどまでに軍事国道の意味の在り方を考えらせられる道も数少ない. 起点・終点ともに「樽ヶ濱」となっている短区間国道.そのコンセプトとしては鶏知と樽ヶ濱港とを結ぶ路線としての位置づけで国道特10号と相補的な関係を持たせていたものであろう. 大正9年の段階で,竹敷港から鶏知までの陸路は決して万全な整備があったとは考えにくい. この陸路の道でさえも「国道特10号」として指定したのも,道路修繕にかかる費用の捻出があったからであろう. 竹敷港から鶏知までは何も陸路だけがアクセス路になるものではなく,海上航路に活路を見出すには手間がかからない.海軍ともなれば,航路であっても不自由はすることはなく,司令部から竹敷港へと向かうことを想定した場合,樽ヶ浜港までの2kmに満たない陸路さえ進めば,残りは航路で竹敷に到着することができる.陸路のみで竹敷に向かうよりは圧倒的に早いはずだ. そのように考えると,国道特9号はメインルートから樽ヶ浜港までの修繕整備にかかる目的として選定されたと考えることで,ある程度の軍事的な目的を見出すことができそうだ. ただ,この道も全国レベルでノミネートされた軍事国道の候補の中で,どのような経過で最後まで残り,また選定に至ったのかという疑問は残り続ける. 【参考・出典】 「軍事道路改修に関する件」 大日記乙輯大正12年,レファレンスコードC03011909800,大正12年 「美津島町誌」 美津島町役場,1978 [2007.12.03作成] |