政令第二百五十号


道路運送法施行令をここに公布する。

御名 御璽

 昭和二十六年六月三十日
内閣総理大臣 吉田茂

 道路運送法施行令

内閣は、道路運送法(昭和二十六ハ年法律第百八十三号)第七十七條、第百二十二條第一項及び第百二十三條の規定に基き、この政令を制定する。

 第一章 事業の補償

(事業の廃止補償)
第一條
 路線を定める自動車運送事業を国において経営したため、これと路線を共通にする自動車運送事業を経営する者が、その路線を共通にする部分につき事業を継続して経営することができなくなつてこれを廃止した場合における補償金額は、運輸省令で定める方法により計算した自動車運送事業者の事業の当該部分における常態と認められる利益の年額(営業収入の年額から営業費の年額を控除した残額をいう。但し、その残額が営業収入の年額の百分の五に達しないときは、当該収入の年額の百分の五とする。)の七年分の金額以内において、当該官庁が運輸大臣と協議して決定する。

2 前項の場合において、運輸省令で定める方法に基き当該官庁が運輸大臣と協議して査定するところにより自動車運送事業者の事業の当該部分の事業用固定資産(自動車運送事業に必要な固定的な資産であつて運輸省令で定めるものをいう。)の価額から残存物件の価額を控除し、残額があるときは、その額を同項の規定による補償金額に加算することができる。

3 当該官庁は、前二項の規定による補償金をすみやかに自動車運送事業着に交付しなければならない。但し、自動車運送事業者の同意があつたときは、分割して三年以内に交付することができる。

4 前三項の規定は、路線を定める自動車運送事業を国において経営したため、これと路線を共通にする自動車運送事業を経営する者が、その路線を共通にしない部分につき事業を継続して経営することができなくなってこれを廃止した場合における補償金の交付について準用する。

5 前各項の規定による補償金の交付を受けようとする者は、国の経営する路線を定める自動車運送事業の運送開始の日から一年以内に、その事業の廃止の許可を申請しなければならない。

(事業の減益補償)
第二條
 路線を定める自動車運送事業を国において経営したため、これと路線を共通にする自動車運送事業を経営する者が、その路線を共通にする部分につき著しく収益を減少するようになつた場合における補償金額は、運輸省令で定める方法により計算した国の経営するその自動車運送事業に転換したと認められる運輸数量に対応する自動車運送事業者の利益(営業収入から営業費を控除した残額をいう。以下同じ。)の減少額(国の経営するその自動車運送事業の運輸開始の日から三年以内に係る利益の減少額に限る。)の範囲内において、自動車運送事業者の事業年度の一年ごとに、当該官庁が運輸大臣と協議して決定する。但し、当該自動車運送事業者の当該期間における利益の金額と合せ、同期間における毎月末事業用固定資産の月割平均額(この期間が一年に満たない場合は、その日数を三百六十五で除した数をその額に乗じた額)の百分の五をこえることができない。

2 前項の規定による補償金は、国の経営する路線を定める自動車運送事業の運輸開始の日から一年を経過した後でなければ、交付しない。

3 第一項の規定による補償金は、前條の規定による補償金を交付する場合には、交付しない。

(省令への委任)
第三條
 前二條に規定する事業用固定資産及び残存物件の価額、営業収入並びに営業費の計算その他道路運送法(以下「法」という。)第七十七條に規定する補償に関し必要な事項は、運輸省令で定める。

 第二章 職権の委任

(自動運送事業に関する職権の委任)
第四條
 第二章及び法第三章に規定する運輸大臣の職権(国において経営する自動車運送年業及び専用自動車道に係るものを除く。)で左に掲げるものは、陸運局長に委任する。
 一 運輸開始の期日又は期間の延期又は伸長
 二 運賃及び料金の収受の猶予期間の許可
 三 運送約款の設定又は変更の認可
 四 事業計画の変更で左に掲げるものの認可
  イ 主たる事務所の位置の変更
  口 営業所の新設若しくは廃止又はその位置の変更
  ハ 事業用自動車の種別の変更
  ニ 二年を通じ継続して運輸をするものでないときの運輸をする期間の変更
  ホ 一般乗合旅客自動車運送事業の停留所の新設若しくは廃止又はその位置の変更
  へ 一般路線貨物自動車運送事業の荷扱所の新設若しくは廃止又はその位置の変更
  ト 通運事業法(昭和二十四年法律第二百四十一号)第十五條の規定により取扱駅の指定を受けた者が主として鉄道(軌道及び日本国有鉄道の経営する航路を含む。)により運送される貨物の集貨配達に使用すべき自動車の数の変更
 五 事業計画に定める業務の確保に関する命令
 六 法第二十三條の規定による事業区域の指定
 七 法第三十二條第四項の規定による命令
 八 法第三十四條第一項の規定による命令
 九 自動車を使用して通運事業を経営することの免許を受けた者又は通運事業法第十三條の規定により新たに自動車を使用することの認可を受けた者に対して法第四十六條の規定により行う自動車運送事業の種類及び事業区域の指定
 十 專用自動車道の工事施行の認可申請期間の伸長
 十一 專用自動車道の工事の着手又は完成の期間の伸長
 十二 專用自動車道の工事の着手の届出の受理
 十三 一般乗用旅客自動車運送事業、一般区域貨物自動車運送事業(霊枢の運送に限定するものに限る。)、一般小型貨物自動車運送事業及び特定自動車運送事業に関する事項で、前各号及び次項各号に掲げる事項以外のもの
 十四 法第四條第四項の規定により免許の期間を限定する自動車運送事業に関する事項で、前各号及び次項各号に掲げる事項以外のもの
 十五 次項に規定する事項で二以上の都道府県の区域及び北海道にあつては二以上の陸運事務所(地方自治法の一部を改正する法律(昭和二十五年法律第百四十三号)附則第三項の事務所をいう。)の管轄区域にわたるもの

2 法第二章に規定する運輸大臣の職権(国において経営する自動車運送事業及び専用自動車道に係るものを除く。)で左に掲げるもののうち前項(第十五号を除く。)に規定する事項以外のものは、都道府県知事に委任する。
 一 事業計画の変更(專用自動車道に関する事項を除く。)の認可又は事業計画の変更に係る届出の受理
 二 事業区域外の運送の許可
 三 事業用自動車の貸渡の許可
 四 事業の休止の許可

(自動車事業に関する職権の委任)
第五條
 法第三章に規定する自動車道事業に関する運輸大臣及び建設大臣の職権(国において経営する自動車道事業に係るものを除く。)で左に掲げるものは、陸運局長及び都道府県知事に委任する。
 一 工事施行の認可申請期間の伸長
 二 工事の着手又は完成の期間の伸長
 三 法第五十二條第三項及び法第五十七條第四項(法第五十八條第二項、法第五十九條第三項及び法第六十條第二項において準用する場合を含む。)の規定による届出の受理
 四 法第五十四條に規定する工事方法の変更及び法第六十七條に規定する構造又は設備の変更であつて左に掲げるもの(事業計画の変更に件うものを除く。)の認可
  イ 路面及び路床の構造の変更
  口 直線部の横断こうばいの変更
  ハ 盛土及び切土の斜面のこうばいの変更
  二 橋(径間二十メートル以上のものを除く。)、開きよ及び暗ぎよの構造の変更
  ホ 排水設備の構造の変更
  へ 駐車場の構造の変更
  ト 防護設備の構造の変更
  チ 信号、通信及び照明の設備の構造の変更
 五 法第五十四條に規定する工事方法の変更及び法第六十七條に規定する構造又は設備の変更に係る属出の受理
 六 事業計画の変更に係る届出の受理
 七 法第七十二條の規定において準用する法第二十二條第四項の規定による命令
 八 事業の休止の許可

2 自動車道事業の供用約款の認可に関する法の規定による運輸大臣の職権は、陸運局長に委任する。

3 法第七十條第一項の規定による命令は、当該大臣の認可を要する事項に関するものを除いて、陸運局長及び都道府県知事も行うことができる。

(自動車運送取扱事業に関する職権の委任)
第六條
 法第五章に規定する運輸大臣の職権で次項に規定する事項以外のものは、陸運局長に委任する。

2 法第九十一條第一項に規定する自動車運送取扱事業の休止の届出の受理に関する運輸大臣の職権は、都道府県知事に委任する。

(自家用自動車の使用に関する職権の委任)
第七條
 自家用自動車の共同使用の許可に関する法の規定による運輸大臣の職権は、陸運局長に委任する。

2 法第七章に規定する運輸大臣の職権で前項に規定する事項以外のものは、都道府県知事に委任する。

 第三章 地方公共団体

(法第百二十三條の市)
第八條
 法第百二十三條の市は、左に掲げるものとする。
 大阪市 京都市 名古屋市 横浜市 神戸市 福岡市 仙台市

 附則
1 この政令は、昭和二十六年七月一日から施行する。
2 道路運送法施行令(昭和二十二年政令第三百二十号)は、廃止する。

運輸大臣       山崎猛
建設大臣臨時代理
国務大臣       周東英雄
内閣総理大臣    吉田茂