法律第百三十号


道路交通取締法をここに公布する。

御名 御璽

 昭和二十二年十一月八日
内閣総理大臣 片山 哲

 道路交通取締法

第一章 総則

第一条 この法律は、道路における危険防止及びその他の交通の安全を図ることを目的とする。

第二条 この法律における用語の意義は、次の通りとする。

道路とは、道路法による道路、自動車道及び一般交通の用に供するその他の場所をいう。

自動車道とは、専ら自動車の一般交通の用に供する通路及び自動車運送事業者が専らその事業用自動車の用に供する通路をいう。

車馬とは、牛馬及び諸車をいう。牛馬とは、交通運輸に使役する家畜をいい、諸車とは、人力、畜力その他の動力により運転する軌道車又は小児車以外の車をいう。但し、そりは、これを諸車とみなす。

自動車とは、道路において、原動機を用い、軌道又は架線によらないで運転する諸車をいう。

軌道車とは、道路において、軌道又は架線により運転する車をいう。

第三条 道路を通行する歩行者又は車馬は、左側によらなければならない。

第四条 歩道と車道の区別のある道路においては、歩行者又は車馬は、その区別に従つて通行しなければならない。但し、学生生徒の隊列、葬列その他の行列は、車道を通行することができる。

歩道及び車道の意義並びに歩道又は車道の通行の区分及び横断について必要な事項は、命令でこれを定める。

第五条 道路を通行する歩行者、車馬又は軌道車は、命令の定めるところにより、信号機、道路標識若しくは区画線の表示又は警察官吏の指示に従わなければならない。

信号機、道路標識及び区画線の意義、設置及び管理について必要な事項は、命令でこれを定める。

第六条 都道府県知事(東京都にあつては警視総監以下同じ。)は、危険防止及びその他の交通の安全のため必要があるときは、道路の通行を禁止し、又は制限することができる。

警察官吏は、危険防止のため緊急の必要があるときは、一時道路の通行を禁止し、又は制限することができる。

第二章 車馬及び軌道車

第七条 車馬又は軌道車の操縦者は、無謀な操縦をしてはならない。

前項において無謀な操縦とは、左の各号の一に該当する行為をいう。

一 構造及び装置における重大な故障その他の事由により安全に操縦できない車馬を操縦すること。

二 法令に定められた運転の資格を持たないで諸車又は軌道車を運転すること。

三 前号の外、酒に酔いその他正常な運転ができない虞があるにかかわらず、諸車又は軌道車を運転すること。

四 たずな、ハンドルその他の装置による安全な操縦に必要な操作を怠つて車馬又は軌道車を操縦すること。

五 法令に定められた最高速度の制限を超え又は他の交通に対し不当に迷惑を及ぼすような方法で、諸車又は軌道車を運転すること。

警察官吏は、前項第一号乃至第三号に該当する行為のあつた場合において、危険防止のため特に必要があると認めるときは、一時その車馬又は軌道車の操縦を停止することができる。

第八条 車馬又は軌道車の操縦者は、法令に定められた速度の範囲内で、道路、交通及び積載の状況に応じ公衆に危害を及ぼさないような速度と方法で、操縦しなければならない。

前項の外、車馬の操縦者の操縦上遵守すべき事項については、命令でこれを定める。

第九条 自動車は、都道府県知事の運転免許を受け、且つ、運転免許証を携帯している者でなければ、これを運転してはならない。

都道府県知事は、定期又は臨時に運転免許証についての検査を行うことができる。

都道府県知事は、運転免許を受けた者が不具廃疾者となり、又は故意過失により交通事故を起したときその他特別の事由の生じたときは、運転免許を取り消し若しくは停止し、又は必要な処分をすることができる。

第一項の規定による運転免許及び前項の規定による運転免許の取消又は停止の効力は、全都道府県に及ぶ。

運転免許を受けた者は、重ねて同種の運転免許を受けることができない。

第一項の規定による運転免許に関して必要な事項は、命令でこれを定める。

第十条 自動車の最高速度は、命令でこれを定める。

都道府県知事は、道路、区域又は時間を限り、前項の規定による命令に定める最高速度の範囲内で、最高速度の制限を定めることができる。

都道府県知事は、消防自動車、救急自動車その他主務大臣の定める自動車(以下緊急自動車という。)について、第一項の規定による命令の定める最高速度を超えて、最高速度の制限を定めることができる。

都道府県知事は、自動車道で運転する自動車について、第一項乃至前項の規定にかかわらず、最高速度の制限を定めることができる。

第十一条 道路を通行する車馬には、命令の定めるところにより、燈火をつけなければならない。

第十二条 車馬は、他の交通を妨害する虞のある場合においては、併進し又は後退し若しくは転回してはならない。

第十三条 道路における車馬の追従又は追越について必要な事項は、命令でこれを定める。

第十四条 車馬は、左折しようとするときは、道路の左側によつて徐行しなければならない。

車馬は、右折しようとするときは、交さ点の中心の外側を回つて徐行しなければならない。

第十五条 車馬は、鉄道又は軌道の踏切を通過しようとするときは、安全かどうかを確認するため、一時停車しなければならない。但し、信号機の表示、警察官又は信号人の指示その他の事由により安全であることを確認したときは、この限りでない。

第十六条 車馬及び軌道車相互の間の通行についての順位は、左の各号の順序とする。

一 緊急自動車
二 緊急自動車以外の自動車及び軌道車
三 自動車以外の車馬

車馬又は軌道車は、前項に定める先順位の自動車又は軌道車に進路を譲らなければならない。

緊急自動車の塗色、警音器、燈火等について必要な事項は、命令でこれを定める。

第十七条 順位の同じ車馬又は軌道車が、交通整理の行われていない交さ点に異なつた方向から同時に入ろうとする場合においては、右方のものは、左方のものに進路を譲らなければならない。

第十八条 車馬又は軌道車は、狭い道路から広い道路に入ろうとするときは、前二条の規定にかかわらず、一時停車するか又は徐行して、広い道路に在る車馬又は軌道車に進路を譲らなければならない。

前項の規定は、緊急自動車については、これを適用しない。

第十九条 交さ点の附近において、緊急自動車が接近して来たときは、軌道車は、交さ点を避けて一時停車し、又、車馬(緊急自動車を除く。)は、交さ点を避け左側によつて一時停車し、これに進路を譲らなければならない。

緊急自動車は、停止の表示のある交さ点においても、特に緊急を要する場合に限り、交通の安全に注意して徐行して通過することができる。

第二十条 車馬又は軌道車の徐行すべき場合について必要な事項は、命令でこれを定める。

第二十一条 停車又は駐車を禁止する場所その他停車又は駐車の方法について必要な事項は、命令でこれを定める。

都道府県知事は、駐車の時間又は場所について必要な制限を定めることができる。

第二十二条 車馬の操縦者は、発進、左折、右折、徐行、停止若しくは後退をしようとするとき、又は後方の車馬に追い越させようとするときは、手、方向指示器その他の方法で合図をしなければならない。

前項の合図について必要な事項は、命令でこれを定める。

第二十三条 諸車の乗車、積載又はけん引の制限について必要な事項は、命令でこれを定める。

警察官史は、諸車の乗車、積載又はけん引について危険防止のため特に必要があると認めるときは、一時その運転を停止することができる。

第三章 雑則

第二十四条 車馬の交通に因り、人の殺傷又は物の損壊があつた場合においては、車馬の操縦者又は乗務員その他の従業者は、命令の定めるところにより、被害者の救護その他必要な措置を講じなければならない。

前項の場合においては、同項に掲げる者以外の者で当該車馬に乗つているものは、同項に掲げる者が同項の規定による措置を講ずるのを妨げてはならない。

第二十五条 道路において交通の妨害となり又は交通の危険を生ぜしめるような行為で命令で定めるものは、これをしてはならない。

第二十六条 左の各号の一に該当する者は、命令の定めるところにより、警察署長の許可を受けなければならない。

一 道路において工事又は作業をしようとする者
二 道路に碑表、広告板、飾塔等を設置しようとする者
三 道路に露店、屋台店等を出そうとする者
四 道路において都道府県知事の定める行為をしようとする者

警察署長は、前項の許可に関し、危険防止及びその他の交通の安全のために必要な措置を命ずることができる。

警察署長は、沿道の土地における工作物その他の施設及び物件が道路における交通に著しい危険を生ぜしめる虞がある場合においては、その占有者に対し、その危険の防除のために必要な措置を命ずることができる。

第四章 罰則

第二十七条 みだりに信号機を操作し、若しくは道路標識を移転し、又は信号機、道路標識若しくは区画線を損壊して道路における交通の危険を生ぜしめた者は、これを三年以下の懲役又は五千円以下の罰金に処する。

みだりに信号機若しくは道路標識に類似し又はその効果を妨げるような工作物を設置した者は、これを六箇月以下の懲役又は三千円以下の罰金に処する。

第二十八条 左の各号の一に該当する者は、これを三箇月以下の懲役又は三千円以下の罰金に処する。

一 第七条第一項、第九条第一項又は第二十四条第一項の規定に違反した者
二 第二十三条第二項又は第二十六条第二項若しくは第三項の規定による処分に違反した者

第二十九条 左の各号の一に該当する者は、これを千円以下の罰金又は科料に処する。

一 第八条第一項、第九条第五項、第十一条、第二十二条第一項、第二十四条第二項、第二十五条又は第二十六条第一項の規定に違反した者
二 第五条、第十二条、第十四条、第十五条、第十六条第二項、第十七条、第十八条第一項又は第十九条第一項の規定の違反となるような行為をした者
三 第三条又は第四条第一項の規定の違反となるような行為をした車馬の操縦者
四 第六条又は第二十一条第二項の規定に基く禁止又は制限に違反した者

第三十条 第四条第二項、第八条第二項、第九条第六項、第十三条、第二十条、第二十一条第一項又は第二十三条第一項の規定に基く命令には、千円以下の罰金又は科料の罰則を設けることができる。

第三十一条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して第二十六条第一項の規定又は同条第二項若しくは第三項の規定による処分に違反したときは、行為者を罰する外、その法人又は人に対して各本条の罰金刑又は科料刑を科する。

附 則

この法律は、昭和二十三年一月一日から、これを施行する。

左に掲げる命令は、これを廃止する。

道路取締令

自動車取締令

形像取締規則

道路取締令及び自動車取締令は、この法律施行前になした行為に関する罰則の適用については、この法律施行後においても、なお、その効力を有する。